2022年度は、年度途中で雇用保険率が変更されるので例年と少し違うので注意が必要です。
労働保険の年度更新について、年に1度しかないですが、まとめてみました。
会社を設立時の概算保険料の申告書を書いたことがある人は、近いのでそれをイメージしてもらえればいいかと思います。
はじめて書く人も、労働保険と雇用保険に加入すべき社員が誰なのかということを把握できれば、そんなに難しいことはないと思います。
一番のポイントは「厚生労働省のエクセルデータをダウンロードして集計し、転記準備を行う」です。後で細かく解説しますね。
労働保険に限りませんが、年に一度の今回みたいな場合、去年の集計表や申告書があるとそれを見ながらやるのが一番早いと思います。
人数や賃金などは変わったりすると思いますが、区分けなど大きな変化はないと思いますので、去年のものを引っ張り出してみましょう。
令和4年度(2022年度)の変更点、注意点
2022年度の変更点は、年度途中で雇用保険率が変更されるので、ここがポイントとなります。
まず、雇用保険料率の変更予定は以下の通りです。(2022年度(令和4年度)の雇用保険料率は変更!会社分は4月から、従業員は10月からでも紹介してます)

これを受けて申告書の記載も以下の変更点があります。
2022年度変更点
- 申告書の令和4年の保険料率欄には、労災保険率のみが印字され、雇用保険料率の印字がされていない
- 令和4年度の賃金総額の見込額が、前年度の賃金総額と比較して、2分の1以上2倍以下の額となる場合には、前年度の賃金総額の2分の1の額(その額に千円未満の端数が生じる場合は、その端数について、(2022/4/1~9/30分)は切り上げ、(2022/10/1~2023/3/31)は切り捨て)となり、それぞれの期間の雇用保険料をかけて算出します。
例えば、下の様になります。(番号・記号は申告書に記載のもの)
確定保険料 936,996円(⑧(イ)78,083千円 × ⑨(イ)12.00/1,000 = ⑩(イ)936,996)) の場合
概算保険料
〈労災保険分〉
⑫(イ)78,083千円 × 3.00/1,000 = 234,249円
〈雇用保険分〉
(1)⑫(イ)78,083千円 ÷ 2 = 39,042千円(端数切り上げ) + 39,041千円(端数切り捨て)
(2)39,042千円 × 9.5/1,000 =370,899円
(3)39,041千円 × 13.5/1,000 =527,053.5円
(4)370,899円 + 527,053.5円=897,952円(端数切り捨て)
〈労働保険料〉
234,249円〈労災保険分〉+ 897,952円〈雇用保険分〉= 1,132,201円
これを下で紹介するエクセルの集計表でいえば下の図に通りです。(雇用保険部分)

ちなみに2021年の変更点は以下の点でした。
2021年度変更点
- 社印が不要になった
- 高年齢労働者分の記入が不要になった(昨年までは満64歳以上の雇用保険料の負担が免除される「高年齢労働者」の項目があった)
令和4年度(2022年)の更新期限
年度更新期間は令和4年 6月1日~7月11日 です。
労働保険の年度更新とは
労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で計算します。
労働保険の保険料は、一部役員や社員などの労働者に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率をかけて計算します。
労働保険では、年度ごとに概算で保険料を納付して、次の年度末に賃金総額が確定したあとに精算するという流れです。
つまり、会社は前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算の保険料を納付するための申告・納付の手続きが必要となります。
これが「労働保険の年度更新」です。
なお、このページでは継続事業の場合で記入していきます。そのほかのパターンはまた改めて書いていきますね。
労働保険の年度更新のよくあるQ&A
- 労働保険の年度更新、遅れたらどうなる?
-
仮に、手続きが遅れると、労働局が保険料の額を決定し、さらに追徴金(納付すべき保険料・拠出金の10%)を上乗せしてきますので、遅れるわけにはいきません。
- 労働保険の年度更新、労働保険対象者はどこまで含まれるの?
-
労働法保険の対象は「労働者」です。これは、職業の種類を問わず、賃金を支払われる者をいいます。
ただし、雇用保険の被保険者とならない学生アルバイト等に支払った賃金がある場合は、労災保険の保険料と雇用保険の保険料を区別して、それぞれ計算した合計が労働保険料となります。
また、役員報酬は対象とならないので、兼務役員ならその部分を除いた金額を記入します。
- 労働保険の年度更新の賃金とは?
-
「賃金」とは、給与、手当、賞与、交通費など労働の対価として、労働者に支払うものすべてが含まれます。
- 集計する給与や賞与は支払日、締め日どっち?
-
支払日ではなく締め日で集計します。例えば3/20締め4/10払いの給与は3月分として集計します。
確定した報酬がベースなので締め日で集計です。
労働保険の年度更新の流れ
- 1.下の集計表を作成
- 2.集計表から申告書を転記して申告書を完成
- 3.申告書を持って労働局や金融機関で納付
というのが大きな流れです。
「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」の記入例、書き方
会社に送られてきた集計表に記入する前に、この厚生労働省のエクセルデータをダウンロードすることを強く勧めます。
極論、このエクセルデータの作成が、労働保険の年度更新のすべてといってもいいと思います。
この厚生労働省のリンク、https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/yousiki.html
を開けると下のような画面に飛びます。

この画面の下の「(年度更新申告書計算支援ツール)」のエクセルデータをダウンロードしてください。
ダウンロードしたエクセルデータを開くと 一番左に説明書が ありますので、それをざっと読んで、その次の集計表の入力に移ります。
それぞれ、月別、賞与別に該当する人数と賃金を入力します。(交通費込です)
記入例
その集計表の記入例(入力)がこれです↓↓

書き方、注意点、ポイント
それぞれの区分の説明をしますね。
<<労働保険分(左半分)>>

(1) 常用労働者 –「常用労働者のほか、パート、アルバイトで雇用保険の資格のある人を含めます。」
つまり、下の2,3以外の人です。
(2) 役員で労働者扱いの人–「実質的な役員報酬分を除きます。」
役員報酬部分を除きます。代表取締役社長など兼務でない役員は含みません。
(3) 臨時労働者–「(1)(2)以外の全ての労働者(パート、アルバイトで雇用保険の資格のない人)を記入してください。」
採用条件のパート、アルバイトの区分ではなく、「雇用保険に加入していない人」が対象です。
<<雇用保険分(右半分)–雇用保険の被保険者>>

(5)常用労働者、パート、アルバイトで雇用保険の資格のある人(日雇労働被保険者に支払った賃金を含む)
多くの場合、(1)と同じ数値となるはずです。
(6)役員で雇用保険の資格のある人(実質的な役員報酬分を除きます)
いわゆる兼務役員が該当します。
区分がわかりずらければ、、、
初めの部分でも書きましたが、もし去年のこの表が残っているなら、去年の3月の部分を見てみてください。
その数字と今回の4月の数字はかなり近くなるはずです。(3月、4月で大きく入退社がないと想定して)
ここが大きく異なるようなら、集計方法が違っている可能性があるので、去年の前回の3月と見比べてみましょう。
労働保険についてはこの1冊がオススメです↓↓
<<労働保険の数少ない専門書の一つです。労基の担当者もこの本持ってましたよ!!>>
「労働保険概算・確定保険料/一般拠出金申告書」の記入例、書き方、提出方法
上の集計表のデータを入力すると横のシートの申告書にデータが転記(リンク)されています。
これに、下の黄色の①~⑧の保険料率など8つのデータを入力するだけで申告書の完成です。
(この黄色の①~⑧は会社に送られてきた用紙に印刷されているはずです)
これを会社に送られてきた複写の申告書に記入すれば完成です。
入力されたデータはこんな感じです。↓↓

それぞれ、説明すると以下のようになります。
・「(8)保険料・一般拠出金算定基礎額」は、前年4月1日から当年3月31日までのすべての労働者の賃金総額を記入。
・賃金総額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数は切り捨て。
・ 「(10)確定保険料・一般拠出金額」は、(8)の「保険料・一般拠出金算定基礎額」に(9)の「保険料・一般拠出金率」をかけた額を記入。
・「(14)概算・増加概算保険料額」は、(12)の「保険料算定基礎額の見込額」に(13)の「保険料率」をかけた額を記入。
・「(12)保険料算定基礎額の見込額」は、一年間に支払う賃金総額の見込額を記入。ただし、見込額が前年度の賃金総額の1/2~2倍以下は、前年度の賃金総額をそのまま申告年度の賃金総額の見込額として使用。
・「(25)事業又は作業の種類」は、「労災保険率表」の「事業の種類」又は「第二種特別加入保険料率表」の「事業又は作業の種類」を記入。
「労働保険概算・確定保険料/一般拠出金申告書」の一般拠出金の申告・納付について
上の流れで作成した申告書に保険料を添えて、銀行、労働局又は労働基準監督署に提出します。
(黒色と赤色で印刷してある申告書は労働局又は労働基準監督署へ、ふじ色と赤色で印刷してある申告書は労働局へ提出)
<<注意>>
申告書・納付書は上下に繋がってますので、切り離さずそのまま銀行などに提出しなくてはいけません。
「労働保険概算・確定保険料/一般拠出金申告書」の納付書(領収済通知書)の記入を間違えたら、、、
納付書(領収済通知書)の金額は訂正できません。
記入誤りをした場合は、労働局又は労働基準監督署で新しい納付書を受け取り、書き直します。
労働保険料・一般拠出金の納期限
全期 (第1期) | 第2期 | 第3期 | |
通常の納期限 | 令和4年 7月11日 | 令和4年 10月31日 | 令和5年 1月31日 |
口座振替を利用している 事業主 | 令和4年 9月6日 | 令和4年 11月14日 | 令和5年 2月14日 |
労働保険事務組合 | 令和4年 7月11日 | 令和4年 11月14日 | 令和5年 2月14日 |
上の表のように口座振替をすると、申告よりも若干の猶予があるので、資金繰りは若干楽になります。
その他注意点など
・上の例では、 継続事業の一般的な場合について書いてみましたが、継続事業以外の場合であったり、海外へ従業員を派遣している場合など、いろいろなケースがあり全ての記入例を記載するのは難しいで勘弁してくださいね。
口座振替を利用している場合について
口座振替の場合、銀行で申告書の受付はできません。労働局・労働基準監督署へ郵送か持参します。
所得申告書と納付書を切り離してもいいと思うのですが、労働基準監督署の担当者に口座振替である説明が楽なのでくっついたままいつも提出しています。
その他のこの時期の更新・関連コンテンツ
<<算定基礎についてはこちら↓↓>>
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入例、書き方、提出方法、注意点
<<賞与支払届についてはこちら↓↓>>
「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」の書き方、記入例、提出方法
同じ時期に記入する「障害者雇用状況報告書」ですが、障害者雇用自体イマイチ分かっていないという声が多かったので、「事務担当者のための障害者雇用入門」を作成しましたよかったご覧ください。

労働保険の年度更新を簡単にする方法
労働保険の年度更新って大変ですよね。書く所が多い上に、年に一度の集計で集計対象がどこまでかとか思い出すのも大変、、、ただでさえ他にも書類作成したり手続き多いのに、、、私も散々苦労してきました。
しかし、給与計算ソフトの「人事労務freee」を使うと、ソフトが自動で計算してくれるので画面上の数値を転記するだけで、ラクに今回の申告書を作成することが出来ます!!
その実際の転記する「人事労務freee」のイメージはこちら↓

私は社長に「人事労務freeeは無料で使えるから試してみていいですか? 」とテストで使い始めて、このようなメリットで社長を説得しました。個人アドレスで無料の登録・体験できるので、気になる方は公式サイトをチェック!!「人事労務freee 」の公式サイト